SIEMと脅威検知の関係性

SIEMと脅威検知の関係性

SIEMと脅威検知の関係性

企業や組織がサイバー攻撃に対抗するうえで重要となる「SIEMと脅威検知」は、膨大なログを効率よく管理し、AIや自動化ツールと組み合わせて迅速にインシデント対応を行うために不可欠な仕組みです。本記事では、SIEMの基本機能やUEBA・SOARとの統合方法、インシデント対応の流れを具体的に解説します。


SIEMと脅威検知が重要視される背景

膨大なログの可視化と相関分析

SIEM(Security Information and Event Management)は、各種サーバーやネットワーク機器、セキュリティ製品などから収集したログを一元的に管理・分析する仕組みです。従来の手作業によるログ監査では、膨大な量のイベントから攻撃の兆候を見抜くことは困難でした。そこでSIEMが担うのが、相関分析による脅威の早期検知です。たとえば、サーバーへの不正アクセスやアカウントの大量ロックアウトなど、複数のログを関連づけることで異常を把握しやすくなります。

攻撃の高度化と統合的脅威管理の必要性

標的型攻撃やゼロデイ攻撃など、サイバー攻撃は年々高度化しています。攻撃者はさまざまな段階を経てネットワーク内部に侵入し、検知を逃れながらデータを盗み出すケースも増えています。そこで、企業としてはSIEMを軸にUEBA(User and Entity Behavior Analytics)やSOAR(Security Orchestration, Automation and Response)を組み合わせた総合的な脅威検知と対策が求められます。

参考: AIを活用する動向については、AIを活用した最新の脅威検知(記事No[17])でも詳しく解説しています。


SIEMの基本機能とログ活用

イベント収集と集中管理

SIEMの基礎は、「多種多様なログを一括収集して集中管理する」ことです。ファイアウォールやIDS/IPS、OSやアプリケーションなどのログをリアルタイムで取り込み、各イベントを時系列や重要度などで整理します。これにより、脅威の兆候を見逃さず、セキュリティ担当者が分析しやすい環境が整います。

相関ルールとアラート

SIEMでは、あらかじめ設定した相関ルール(たとえば「同一IPからの複数回のログイン失敗」や「短時間での多数のアクセス試行」など)に合致した場合、自動的にアラートを発行します。さらに、ある程度の柔軟性を持たせることで、新種の攻撃パターンやAIによる異常検知とも連携がしやすくなります。

可視化とレポーティング

ログデータをグラフやダッシュボードで可視化し、レポーティング機能を利用することで、脅威の傾向を俯瞰できます。経営層への報告資料としても活用しやすいため、セキュリティ対策の重要性を社内で共有するうえでも欠かせない機能です。


UEBAとSOARが支える高度なインシデント対応

UEBA(ユーザー行動分析)の役割

UEBA(User and Entity Behavior Analytics)は、ユーザーや端末、アプリケーションなどの通常の挙動パターンを学習し、その逸脱を高精度に検知する技術です。これにより、従来のシグネチャベースや相関ルールだけでは発見が難しかった内部不正やアカウントの乗っ取り、情報漏洩の疑いを早期にキャッチできます。

  • 内部ユーザーの行動監視: 権限を持つユーザーが突然大量のデータをダウンロードする場合など
  • 機器やアプリの異常動作: 急激に通信量が増える端末や想定外の時間帯に動作するアプリなど

SOAR(自動化とオーケストレーション)の利点

SOAR(Security Orchestration, Automation and Response)は、インシデント発生時に行う処理を自動化し、担当者の工数を削減するとともに対応スピードを向上させるプラットフォームです。SIEMでアラートが発生した際に、あらかじめ設定されたワークフローに沿ってアカウントをロックしたり、ネットワークセグメントを自動で遮断したりできます。

要素主な機能メリット
UEBAユーザー&エンティティ行動分析内部不正や高度な攻撃を高精度に検知
SOAR自動化・オーケストレーション対応スピードの向上と人的負荷の軽減
SIEMログ収集・相関分析、可視化複数システムのイベントを一元管理

参考: AI技術を導入する際の注意点やステップは、AI脅威検知の導入ガイド(記事No[19])で紹介しています。


インシデント対応の流れとベストプラクティス

1. アラート検知と初動対応

SIEMやUEBAで異常を検知したら、最初のステップはアラートの内容を精査し、重大度を評価することです。誤検知や軽微な事象であれば、ログ記録のみにとどめます。一方、重大と判断した場合には、SOARや手動の手順を用いて緊急対策を施します。

2. 根本原因調査(フォレンジック)

攻撃経路や被害範囲を特定するために、フォレンジック(証拠保全と詳細調査)が必要です。SIEMで収集したログとUEBAによるユーザー行動分析を組み合わせることで、どの端末からどのように侵入が行われたのかを特定しやすくなります。

3. 復旧と再発防止策

影響範囲内のシステムを復旧し、再発防止策を策定します。たとえば、脆弱なアカウント運用ルールを改訂する、ファイアウォールポリシーを再評価する、必要に応じてゼロトラストネットワークを導入するなどの対策が考えられます。

参考: ゼロトラストの導入に関しては、ZeroTrust導入ガイド(記事No[1])や格安ゼロトラスト構成(記事No[2])も参考にすると、包括的なセキュリティ戦略が構築しやすくなるでしょう。


まとめ

SIEMと脅威検知の関係性は、単にログを管理するだけでなく、UEBAやSOARなどの高度な技術を組み合わせることで飛躍的に強化されます。クラウド環境やオンプレミス環境を問わず、大量のログから重要なインシデントを発見し、素早く対処するうえでSIEMは要となる存在です。また、AIや自動化ツールとの連携によって、従来以上にスピーディで正確な脅威検知とインシデント対応が実現可能です。今後のサイバー攻撃の高度化を見据え、SIEMと脅威検知を連携した総合的なセキュリティ対策を整備していきましょう。


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