ゼロトラスト vs SASEの違い
ゼロトラストとSASE(Secure Access Service Edge)は、現代のセキュリティ戦略において重要な概念ですが、その役割や実装方法には明確な違いがあります。本記事では、両者の違いと関係性を詳しく解説します。
ゼロトラストの基本概念
ゼロトラストは、「全てを信頼しない」というセキュリティモデルであり、ユーザー、デバイス、アプリケーションなど、全てのアクセスに対して検証と認証を行います。これにより、内部・外部を問わず、全ての通信を安全に保つことが可能となります。
主要要素
- マイクロセグメンテーション: ネットワークを細かく分割し、セグメント間のアクセスを制御することで、攻撃の拡大を防ぎます。
- 厳格な認証: 多要素認証(MFA)などを用いて、ユーザーやデバイスの信頼性を確認します。
- トラスト境界の撤廃: 内部ネットワークも外部と同様に信頼せず、全てのアクセスを検証します。
SASEの基本概念
SASEは、ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウド上で統合的に提供するフレームワークです。これにより、ユーザーや拠点がどこにいても、一貫したセキュリティポリシーを適用できます。
主要要素
- SD-WAN: ソフトウェアによる柔軟なネットワーク管理。
- セキュリティ統合: SWG、CASB、ZTNA、FWaaS などを一元化。
- クラウドベース管理: 全てのポリシーと監視をクラウドで一元運用。
ゼロトラストとSASEの違い
項目 | ゼロトラスト | SASE |
---|---|---|
概念 | 全てのアクセスを信頼せず、検証と認証を行うセキュリティモデル | ネットワークとセキュリティ機能をクラウド上で統合的に提供 |
主要機能 | マイクロセグメンテーション、MFA、ゼロトラスト境界 | SD-WAN、SWG、CASB、ZTNA、FWaaS |
実装形態 | オンプレミス、クラウド、ハイブリッド | クラウド中心 |
適用範囲 | アクセス制御・認証 | ネットワーク制御とセキュリティ管理の統合 |
導入時の比較ポイント
- セキュリティ機能の範囲: ゼロトラストはアクセス制御が中心、SASEはネットワーク含む統合型。
- 運用負荷: ゼロトラストはツールの統合が課題、SASEは一元運用だが導入刷新が必要。
- 拡張性: ゼロトラストは段階導入に強み、SASEはグローバル展開に向く。
- QoS: ゼロトラストは別構成が必要、SASEはSD-WANで最適化可。
- コスト面: ゼロトラストは低予算から可、SASEは包括型で初期費用が高い傾向。
- ベンダーロックイン: ゼロトラストは製品選定が自由、SASEは統合製品が前提。
導入事例
グローバル企業A社(SASE導入)
世界各国に拠点を持ち、出張やリモートワーカーが多いA社は、SD-WANとクラウド型セキュリティゲートウェイを統合するSASEを導入。ポリシーの一元管理とログの集中監視が可能となり、運用負荷の軽減とガバナンス強化を実現しました。